田舎
【イメージ図です】

私が田舎で住んでいた家もご多分に漏れず「汲み取り便所」の家でした。

都市部で生まれ育った方には経験がないかもしれませんが、今でも田舎では下水処理施設が十分に整っていないところが数多く見られます。

理由は様々ですが、田舎や特に山間部に下水処理施設に関する物を作ること自体が金銭的にも技術的にも難しいのでしょう。浄化水槽を導入している家も少なくありませんが、古い田舎家は今だに汲み取り便所です。

汲み取り便所と言うと我が家にも和式の便器が備え付けてありましたが、プラスティック製の洋式便座を購入して上にかぶせていました。

汲み取り便所の構造とは?

まずは汲み取り便所の構造です。

便器の部分から下に2メートルくらいの管があり、その下に汚物を貯める空間があります。これだけだと臭くてたまらないので、管の地上近くに別の管があり、外につながっています。

これは「煙突」と呼ばれていました。別に煙が出るわけではありませんが、形が煙突に似ていたからなのでしょう。煙突の最上部には小型の電気式ファンが付いており、空気を外に逃がす役割があります。

[関連記事] トイレの煙突が折れるとどうなるのか?

田舎家トイレの煙突

便所に使い方も何も無いのですが、こっそり使い方をお教えしましょう。

汲み取り式便所の使い方

私は気になる性格だったので、用を足した後には汚れていなくても便器の面に水をかけて流していました。

ここで勘の良い方はお気づきになられたかもしれませんね。「溜まってきたらどうするんだろう?」と思われたかもしれません。

使用していると時の経過とともに汚物やトイレットペーパーなどが溜まってきます。ペーパーそのものはかさ張るので便器2メートルくらい下の空間には徐々に入りきらなくなってしまいます。

ここでしなくてはならないのが「水入れ」です。トイレの上部(便器)からバケツで何倍か水をかけると、かさ張っていたトイレットペーパーが水分で圧縮されて小さくなります。

これで一安心です。もう少し「使う」ことができます。

溜まってきたらくみ取り屋さんを呼ぶ

しかし水入れにも限界があります。段々と物が溜まって限界近くに達してきたら汲み取り屋さんの出番です。村には必ずどこかしら衛生センターのような汲み取りを行ってくれる業者がいますので、急いで電話をかけます。

仕事が暇なのか、電話をすると大抵は直ぐに来てくれました。汲み取り便所には外から汚物を吸い出すためにプラスティック製のマンホールみたいなのが備え付けられており、そこを開けて汚物をバキュームして回収します。

単に吸い取っただけでは完全に回収することができないので、便所の中からもバケツ何杯分かの水を注ぎます。そこでおじさんが「もう一杯!」と掛け声を上げるとそれに合わせて水を入れます。

「もう一杯!」

最後に「もういいよ~」と言ってくれたらお終いです。これでトイレもスッキリキレイになりました。毎回の汲み取りは2ヶ月に1回の頻度で来てくれており、毎回2千円ちょっと支払っていました。

汲み取り便所は衛生面でも問題が大きいと思いますが、田舎のボットン便所はこんな感じです。最近は浄化水槽の家が増えてきているので、こんな経験も少なくなってきているのでしょう。